静岡県のテーラー新屋のダイスケです
先日、叔母の一周忌があり、親族で集まった際に礼装について尋ねられました
その際、案外あやふやだと感じたのが「喪章」を付ける際のマナーでした
そこで、今回は弔辞の際に用いる「喪章」について書いてみたいと思います
喪章の由来をさかのぼっていくと、騎士道華やかりしころの中世イギリスにつきあたります
ときの王および女王お気に入りの騎士だけが、袖にスカーフを巻くことが許され、とくに黒のスカーフは陛下亡き後も命を捧げるという忠誠心の深さを示したと言われています
礼装用のコートにチェスターフィールドというものがありますが、この上衿につけられる黒のベルベットも、もとを質せば喪章の一つだと言われています
フランス革命時、次々とギロチン台にかけられるフランスの貴族たちを悼んで、イギリス紳士が服喪の意でつけたのがその最初です
さて、歴史はこれぐらいにしておいて
喪章は英語でMourning Band(モウニング・バンド)と言いますが、mourningとは悲嘆、喪、服喪期間を意味します
※How Long Will They Mourn Meなんて曲もありますね
Mourning Bandには、Weeper(ウィーパー)との別称もあり、これは「泣く人」を意味し、また、Crape(クレープ)とも呼ばれ、これは喪章が黒のクレープ地(黒紗)でつくられていることから、そのように呼ばれています
喪章は、本来、喪に服していることの証明であり、故人の親族、それも四親等までの近親者に限って用いるのが原則です
男性は喪服上着の左腕上部に幅10センチほどのMourning Bandをつけ、女性は胸に黒いリボンを垂らすのが正しい用い方です
モーニングコートやブラックスーツなどのちゃんとした喪服を着ていれば、必ずしも喪章をつける必要はなく、つまり、服装でちゃんと弔意を示しているので、さらに喪章をつけると意味がだぶるということにもなりかねないと言う方もいらっしゃいます
ただ日本的な習慣として、平服で参列するときに弔意をあらわす意味で喪章を用いたり、社葬などの大きな葬儀で関係者と一般の会葬者を区別する意味で、関係者が喪章をつけたりする例はありますので、原則は原則として、そのへんは臨機応変に対処すればよいと思います
この近親者以外の人が喪章を用いるのは間違いなのですが、このへんの間違いがどこから生まれたかというと、1897年(明治30年)1月、孝明天皇の英照皇太后崩御のおり、日本ではじめて喪章をつけることが行われ、ここから日本独特の風習となって今日に至っているのではないかと私は考えています
さて、せっかくですので、弔辞の際のモーニングの着用についても簡単に書いてみたいと思います
原則は、黒の共地のベスト(白べりがある場合ははずす)に地味な細縞のコールズボンの組み合わせとなります
祝儀には、グレーのベストに派手目なコールズボンを合わせることで、祝儀と不祝儀の区別をはっきりとつけます
ここで、気になるのが、英国の映画などで弔辞の際にスラックスも共地の黒色のモーニングコート姿をたまに見かけることがあります
これは、黒のズボンを合わせるというのはカトリック教徒の習慣で、カトリックの多い欧米では黒ズボンが目立ち、したがって映画などではモーニングの上下が葬儀シーンで見られると言われています
以上、トリビアも交えつつ、喪章について書いてみました
静岡県のテーラー新屋は、モーニングコートもお仕立ていたします