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スーツのフロントカットについて

静岡県のテーラー新屋のダイスケです

今月は待ちに待ったボーナス月ですが、何を買うのかお決まりですか?

もし、スーツを購入する予定でしたら、今回はフロントカットに注目して探すと面白いかもしれません

 

メンズ雑誌では、頻繁にスーツのディテールの紹介がされています

たとえば、Vゾーン深さや、ラペル(下襟)の太さとカーブ、ゴージライン(上襟と下襟のつなぎ目)の角度と上下、肩から袖にかけてのシルエットなど、案外スーツは様々な表情を見せてくれます

 

しかし、ディテールにとって重要な要素の一つであるにもかかわらず、あまり紹介されていないのが、フロントカットです

 

 

そこで、今回はスーツの表情の一つ「フロントカット」について書いてみたいと思います

 

フロントカットとは、ジャケットの前端線と裾線を結ぶ、繋ぎの曲線であり、その線に味わいが出るか出ないかは、その他のあらゆる曲線にニュアンスがあらわれるか現れないかにも通じてきます

 

スーツの上着の前裾のカットは

1. 国柄

2. 流行

3. 好み

によって「表情」が変わってきます

 

3は別として、今回は1と2について書いてみたいと思います

 

 

まずは、お国柄

 

最近はネットも発達しボーダレスの時代なので一概には言えませんが、しかしながら昔から日本のテーラーでは

 

イギリスの服は小丸、アメリカは大丸、フランスは小丸、イタリアは大丸

 

が多いと言われています

 

小丸と大丸の違いは、小丸は途中で一休みして描いた曲線であるのに対し、大丸は一気に描いた曲線であるといった違いで、それにカーブの強さが加わります

 

よって、同じ小丸でもイギリスは直線的、フランスは曲線的と異なるように、アメリカの大丸とイタリアの大丸とも異なります

 

私の感覚では直線的だと保守的や男性的に、曲線的だと柔らか、モダン、優雅などに感じます

 

それでは日本はどうかと言うと、これもお店によって違いますのでイメージ的なものですが

日本の服は中丸が多く中庸で、日本の小丸は中丸に近い小丸で、大丸も中丸に近い大丸なのではないかと思います

 

 

上着の開き具合は同じにして、私が感じる国別のフロントカットのイメージを描いてみました

image1

 

 

とは言っても、最近はこれらのことはまったく当てにならなく、コレクションなどを見てもイタリアのZegnaが英国調だったり、イギリスのHardy Amiesがフランスっぽいフロントカットをしていたりします

 

Zegnaの英国調のフロントカット

Zegnaの英国調のフロントカット

Brioniのイタリアらしいフロントカット

Brioniのチェンジポケット付きだが、イタリアらしいフロントカット

両写真とも、Style.comの2015年秋冬コレクションより

 

 

続いて流行についてです

 

街を歩いていて、最近よく見かけるのはボタンから端までの距離(打ち合わせ)が短く、2つボタンの下のボタンの位置から大きく開いているものをよく見かけます

image1 (1)

 

流行なので良い悪いはありませんが、注意しなければいけないのが、恰幅がよい方はお腹が目立ってしまうので、避けたほうが良いかもしれません

 

では、お腹の出た方はどのようなジャケットが良いかと言うと、ボタンから前端までの打ち合わせが深いもので、フロントカーブが緩く重なり気味で、フロントラインがお腹を包んでくれるものを選ぶと、目立たなくて具合が良いと思います

 

 

簡単にですがスーツの表情の一つである、フロントカットについて書いてみました

 

 

静岡県のテーラー新屋は、お客様の好みによって、フロントカットもしっかりと意識して裁断しています

 

 

 


父の日のプレゼントにループタイはいかが?

静岡県のテーラー新屋のダイスケです

 

父の日まで1カ月をきりましたね

父の日は6月の第3日曜日で、今年は6月21日です

 

毎年何をあげればいいのか迷っている方もいらっしゃると思います

 

私たち世代の父となると特に、ネクタイをプレゼントしたいが、もう退職していてネクタイを締める機会がないので何をあげてよいのか困っているという声も多く訊かれます

 

 

 

そこで、今回はループタイをご提案したいと思います

 

みなさんはループタイってご存知でしょうか?ループタイは別名ポーラータイとも言い、英語ではBolo Tieと書きます

 

一本の紐をBoloと呼ばれるブローチのようなもので留めたスタイルで、アメリカ映画でも、南部から大都会へ出てきたお父さんが締めているのを見かけます

 

 

 

実は、このループタイは年配の方にはすごく具合が良いのです

 

ネクタイは結ぶ際に苦労したり、窮屈に感じたりする方もいますが、その点ループタイは、頭からかぶって紐をワイシャツのカラーの下に入れて、あとは飾り細工のBoloをちょっとだけあげればことが済むからです

 

散歩に出たり、ちょっとした街への用事へ行ったりと、ノータイでは少しスポーティー過ぎて普段着のようだし、ネクタイを締めるのは窮屈だし、といった時に大変都合がよいと思います

 

適当にカジュアルで、ネクタイとノーネクタイの中間を狙った着易さがあって好ましいのではないでしょうか?

 

 

 

また、気軽さといった実用的効果だけでなく、Boloの飾り細工でその人の好みのお洒落をプラスさせる趣味性も持っています

 

たとえば、シルバーを加工したものや、イタリア製のカメオ、石を細工したものもあり、紐も布製や革製、金属など様々な種類があります

 

時間があるようでしたら、シルバーで作ってプレゼントすることもできます

 

 

 

着こなしのコツは、Boloをあまり大きなものを選ばず小ぶりなものにし、普通のネクタイの結び目のようにカラーにぴったりさせるよりは、ほんの少しだけ下のほうに下げておくほうが楽ですし、バランスも良いかもしれません

 

もし注意点があるとすれば、イメージ的に年相応に映りやすいので若い恰好をしていたい方だと素材などいろいろ考える必要があると思います

 

逆に、使い方次第では若い方にも大変合うと思います

 

 

bolo tie

 

Bolo2

 

bolo tie2

 

bolo tie1

 

bolo1

写真はGoogle画像検索より

 

 

父の日にループタイはいかがですか?参考にしてみてください

 

 

 ネクタイの選び方については以前のブログをどうぞ!

http://tailorshinya.blog58.fc2.com/blog-entry-8.html

http://tailorshinya.blog58.fc2.com/blog-entry-9.html

 

 

静岡県のテーラー新屋は、働くお父さんだけでなく、退職したお父さんもを応援しています

 

 

 

 


カマーバンドの由来と襞の向き

静岡県のテーラー新屋のダイスケです

 

先日、海外で結婚式を挙げるお客様からファンシータキシードのご注文をいただきました

ブルーのモヘアに黒色の拝絹を被せたタキシードはとても素敵でした

 

さて、タキシードのアクセサリーの一つにカマーバンドというものがあります

 

今回はその、カマーバンドの由来と横襞の向きについて書いてみたいと思います

 

 

カマーバンドの起源はインドといわれており、インドの民族衣装といえば頭に巻くターバンが有名ですが、このターバンと同じように、ウエストに巻く飾り帯も重要な装飾品のひとつがカマーバンドの起源とされています

※カマーバンドという英語の名称もカシミアと同じようにインド語と英語を合成した呼び名です

 

このインドではごく一般的だった飾り帯を、まず最初に自分たちの着るものに取り入れたのがイギリスの海賊だったのでは?といわれています

 

頭に黒い布地を巻きつけ、半裸のこのの部分にそれと同じ黒い布地を巻きつけたパイレーツスタイルは、映画などで誰もがおなじみです

 

 

ウエストに布を巻くというスタイルが欧州のおしゃれな人たちの間で、まず最初に流行したのは17世紀のことだとされています

イギリスの文献に最初にカマーバンドという言葉が登場したのが1616年のことだからです

 

もっともそれは女性物の飾り帯(サッシュ)として流行して、それが現在まで重要なアクセサリーになり続けています

 

問題はなぜそれが19世紀末から20世紀の始めの時代に登場してきたタキシードにどうしても欠かすことのできないアイテムとして定着したかということになると思います

 

 

フォーマルの着こなしの基本の一つに、ズボンのウエストバンドをみせないというものがあります

 

そのため、ズボンの上端を隠すにはベストがどうしても必要で、そのためドレスベストと呼ばれている、生地やカッティングに凝ったベストが大量にデザインされています

 

本来、タキシードの原型はスモーキングジャケットですので、リラックスする際に着用していたことを考えると、夏場に無理してベストを着用するよりは、カマーバンドで隠そうということになったのかもしれません

 

 

このカマーバンドにはさまざまな種類があり、拝絹と共地の黒無地をオーソドックスとして、ネクタイのような色柄のものもあり、また、もう一つの形態的な特徴としてプリーツ付きのものとプレーンのものがあります

 

じつは、このプリーツはポケットやベントといった機能的な要求からできたもので、カマーバンドのプリーツの本来の役目は物入れといわれています

 

観劇やパーティーに出かけるさい、このプリーツの間にチケットや小銭を入れていたとされているからです

わかりやすく言えば、外国式腹巻ということで、映画など観ても寅さんなんかも、物入れとして活用しています

 

プリーツは装飾的なデザインという要素もあって、現在ではその要素のほうが重視されていますが、本来は物入れのためにつけられたという説です

※他の説として、食事をした際の、食べカスを受け止めるなどという説も聞いたことがあります

 

いろいろな説もあるかもしれませんが、どの説にせよ、カマーバンドのプリーツの山は絶対に上向きでなければならないということです

 

プリーツしかり、スーツの一番下のボタンのアンカフスといい、本来的な意味と機能を完全に把握すれば、自然にどのような着こなしをすればいいのかや、着用方法などがわかると思います

 

 

結局のところ、それらが機能美となって表現されるのだと思います

 

 

静岡県のテーラー新屋は、機能美のあるもの、スーツはもちろん飛行機の流線型も大好きです

 

 

 


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